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遺伝子治療:乳児の神経変性疾患を防ぐための胎児における遺伝子治療
Nature Medicine 24, 9 doi: 10.1038/s41591-018-0106-7
子が受け継いだ遺伝性疾患に対しては、胎児期の遺伝子治療が、早期の不可逆的で致死性の病理学的変化を予防する可能性がある。これについて調べるために、我々はGBAの変異によって引き起こされる神経型ゴーシェ病(nGD)について研究を行った。成人患者の比較的軽い病型では、肝腫大、脾腫大に加え、肺や骨に障害が現れることがあり、これらは対症療法的に酵素補充療法で管理される。nGDの小児期急性致死型は、酵素が血液脳関門を越えられないために治療ができない。nGD患者は、頸部過伸展、斜視や、よく見られる致死的無呼吸など、後脳の神経変性と一致した徴候を示す。loxPで挟んだネオマイシン遺伝子でGbaを破壊し、角化細胞特異的K14プロモーターで調節されるCreリコンビナーゼを導入したnGDマウスモデルを選んで、Gbaを皮膚のみで発現させると、新生仔の致死的な脱水は防止されるが、マウスは15日以内に致死的な神経変性を発症する。このモデルを用いて、胎仔の頭蓋内にアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを注入すると、ニューロンでのグルコセレブロシダーゼ発現が再構築された。少なくとも18週まで生存したマウスは、妊性があり、完全な運動能力を示した。また、神経変性は消失しており、神経の炎症は軽減された。新生仔への治療介入でもマウスは救済されたが、有効性は低かった。我々はまた、臨床へのトランスレーションに向けた次段階として、超音波ガイド下でマカク胎仔の脳全体へのAAV遺伝子導入の実現可能性も明らかにした。