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急性腎障害:ヒトの急性腎障害で起こるde novo NAD+生合成の障害
Nature Medicine 24, 9 doi: 10.1038/s41591-018-0138-z
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)は実験動物で寿命を延長することから、NAD+がヒトの健康に及ぼす影響について関心が高まっている。トリプトファンからのde novo NAD+生合成は進化の過程で保存されてきたが、高等生物種ではニコチンアミド(NAM)からの生合成に取って代わられたと考えられている。本論文では、de novo生合成の律速酵素であるキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRT)が腎臓のNAD+を保護し、急性腎障害(AKI)に対する抵抗性を仲介することを明らかにする。マウスではAKI後に腎臓のNAD+量が減少し、キノリン酸が増加し、QPRTが減少した。QPRT+/−マウスでは、キノリン酸濃度が上昇し、NAD+濃度は低下して、AKIに対する感受性が上昇していた。メタボローム解析からは、尿中キノリン酸/トリプトファン比(uQ/T)の上昇がQPRT低下の指標となることが示唆された。uQ/Tの上昇は、重症患者でのAKIなどの有害性転帰を予測した。NAMの第1相プラセボ対照経口投与試験では、循環中のNAD+代謝産物の投与量依存的増加が明らかになった。NAMは認容性が高く、AKI発症の低下と関連していた。従って、NAD+生合成の障害はハイリスクな入院の特徴である可能性があり、これに対してはNAD+の追加投与が効果を上げると考えられる。