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アテローム性動脈硬化症:ヒトのアテローム性動脈硬化プラークの単一細胞レベルで見た免疫全体像
Nature Medicine 25, 10 doi: 10.1038/s41591-019-0590-4
アテローム性動脈硬化は、循環血中と血管局所で免疫系の多面的関与により促進される。しかし、アテローム性動脈硬化病変内の調節が異常になった免疫細胞に特異的に見られ、虚血性脳卒中や心筋梗塞などの臨床事象につながる特性についてはほとんど分かっていない。今回我々は、単一細胞のプロテオーム解析とトランスクリプトーム解析を用い、臨床症候性患者(最近、脳卒中や一過的な虚血性発作を起こした)では、無症候性患者(脳卒中を最近起こしていない)に比べると、頸動脈プラーク内のT細胞とマクロファージの両方で、はっきりした特性が見られることを明らかにした。症候性患者のプラークは、CD4+ T細胞の他と異なるサブセットと活性化して分化したT細胞が特徴であった。さらに、このようなプラーク中のT細胞サブセットの一部はT細胞疲弊のマーカーを示していた。また、このようなプラークに由来するマクロファージは、異なる活性化を受けた表現型を持っていて、その中にはプラーク脆弱性と関連するサブセットが含まれていた。無症候性患者のプラークでは、T細胞とマクロファージが活性化されていて、インターロイキン1βシグナル伝達の証拠が見られた。プラーク内の自然免疫細胞と適応免疫細胞に特異的に見られる脳血管事象関連特性が突き止められたことは、心臓血管系免疫療法のもっと正確に調整した設計を可能にすると考えられる。