Review Article
がん治療:固形腫瘍のためのネオアンチゲンを標的としT細胞を用いる治療法の開発
Nature Medicine 25, 10 doi: 10.1038/s41591-019-0596-y
がんに対する免疫応答を、腫瘍を標的とするリンパ球の養子移入を介して刺激することは、血液腫瘍では大いに有望とされているが、多くの一般的な固形上皮がんに対する臨床での有効性は低いままである。腫瘍細胞のみが発現する体細胞変異によって生じるネオアンチゲンを標的にすることは、生命維持に必要な健常組織に過度の損傷を引き起こすことなく腫瘍を破壊できる可能性がある。ネオアンチゲンをT細胞の標的とする際の重要な難問には、腫瘍による抗原のプロセシングと提示の際の不均一性とばらつきや、T細胞のどの性質が臨床的に有効な治療に欠かせないかについての理解が不十分であることなどが上げられる。また、腫瘍の体細胞変異を標的としてT細胞によるがんの破壊を促進する際には、実際には腫瘍が発現するネオエピトープの全てが、機能的に識別可能であり、有効な免疫応答を惹起できるようなネオアンチゲンを生じるわけではないという生物学的性質に対処しなければならないと予想される。本総説では、ネオアンチゲンを標的としT細胞を用いるがんの免疫治療を改良していく際の有望性、進展と難問について論じる。