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幹細胞:双性イオン性ハイドロゲル中での培養により未熟なヒト造血幹細胞を増殖させる

Nature Medicine 25, 10 doi: 10.1038/s41591-019-0601-5

造血幹・前駆細胞(HSPC)をex vivoで増殖可能にすることは、HSPCを用いる治療の能力を十分に実現させるのに不可欠である。とりわけ、臍帯血移植のような臨床的に有効な治療への適用は、利用可能なHSPCの量が限られていることで阻まれている。今回我々は、分解可能な双性イオン性ハイドロゲル中でのヒトHSPCの3D培養を用いて、臍帯血や骨髄に由来する表現型的に未熟なCD34+ HSPCを大量に増殖させることに成功した。この培養系は長期造血幹細胞(LT-HSC)の出現頻度を73倍に増加させることが限界希釈アッセイにより実証され、増殖させたこのHSPCは、免疫不全マウス中で少なくとも24週にわたり造血系を再構築することができた。ハイドロゲルの双性イオン性という特性と3Dフォーマットはどちらも、HSPCの自己複製に重要であった。HSPC分化の低下と自己複製の促進に対する3D双性イオン性ハイドロゲル培養の影響は、過剰な活性酸素種(ROS)産生をO2関連代謝の抑制を介する阻害から生じたと考えられる。双性イオン性ハイドロゲルを用いたHSPCの増殖は、造血幹細胞療法の臨床適用を促進できる可能性がある。

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