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認知機能障害:血液脳関門の崩壊はヒト認知機能障害の早期バイオマーカーである
Nature Medicine 25, 2 doi: 10.1038/s41591-018-0297-y
認知機能障害への血管の関わりは、神経病理学研究や神経画像検査、脳脊髄液バイオマーカーを用いた解析によって示されたことで、次第に認知されつつある。また、脳の小血管病は、アルツハイマー病(AD)によるものも含めた認知症の世界全体の症例のおよそ50%に関わっていると推定されている。ADでの血管の変化は、一般にアミロイドβ(Aβ)の血管作動性作用や血管毒性作用に起因するとされてきたが、最近ではタウの作用も関与していると考えられている。動物実験では、Aβとタウは血管の異常と血液脳関門(BBB)の崩壊を引き起こすことが示唆されている。神経血管機能障害とBBB崩壊はADの早期に発症するが、これらがADの古典的バイオマーカーであるAβやタウの変化(これらも認知症発症前に生じる)とどのように関係するのかは分かっていない。我々はこの疑問に取り組むために、BBBに関わる毛細血管壁周皮細胞の新たな脳脊髄液バイオマーカー、可溶性血小板由来増殖因子受容体β、またダイナミック造影磁気共鳴画像法によって測定したBBBの局所的浸透性を用いて、脳毛細血管の損傷を調べた。得られたデータから、初期認知機能障害の見られる患者では、アルツハイマー病のバイオマーカーAβやタウの変化とは無関係に、海馬で脳毛細血管損傷とBBB崩壊が起きていることが明らかになった。この結果は、BBBの崩壊がヒト認知機能障害において、Aβやタウとは無関係の早期バイオマーカーであることを示唆している。