Article

がん治療:がんでの免疫チェックポイントの翻訳制御と治療でのその標的化

Nature Medicine 25, 2 doi: 10.1038/s41591-018-0321-2

がん細胞は、免疫監視から逃れる機構を発達させる。そうした機構の1つである免疫抑制性メッセンジャーRNAの発現調節については非常によく調べられているが、免疫回避が達成される分子機構についてはまだほとんど分かっていない。我々は、肝がんのin vivoマウスモデルを開発し、免疫監視におけるがん遺伝子の協同的作用について調べた。MYC過剰発現(MYCTg)は、KRASG12Dと相乗的に働いて、転移形成につながる悪性度の高い肝腫瘍を誘導し、KRASG12Dのみの場合に比べるとマウスの生存率が低下することが分かった。MYCTg;KRASG12D腫瘍のゲノム規模でのリボソームフットプリンティングを行った結果、KRASG12Dと比べるとPD-L1(programmed-death-ligand 1)などのmRNAの翻訳が変化している可能性が明らかになった。さらに解析を行ったところ、PD-L1の翻訳は、KRASG12D腫瘍ではその5′非翻訳領域中の機能を備えた非カノニカルな上流のオープンリーディングフレームによって抑制されており、MYCTg;KRASG12D腫瘍では、これがバイパスされて免疫による攻撃が回避されることが示された。我々は、PD-L1翻訳を上方制御するこの仕組みが、eIF4Eのリン酸化を強力に阻害する臨床化合物eFT508によって効率よく標的化されることを見いだした。eFT508は、MYCTg;KRASG12D腫瘍の侵襲性や転移性を抑制した。まとめると、今回の研究は、免疫チェックポイントタンパク質が、種類の異なるがん遺伝子によってmRNAの翻訳レベルで操作される仕組みを明らかにしており、この結果は新しい免疫療法に活用できる可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度