CRISPR–Cas9:Cas9タンパク質に対する適応免疫がヒトにすでに存在することの確認
Nature Medicine 25, 2 doi: 10.1038/s41591-018-0326-x
CRISPR–Cas9システムはゲノム編集のための強力な手法であり、これを使えば特定のDNA配列を高精度で改変することができる。CRISPR–Cas9システムを使ってヒトの遺伝性疾患を矯正する治療については、多くの研究が進行中である。最も広く使われているCas9オルソログは、黄色ブドウ球菌( Staphylococcus aureus)と化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来のものである。これら2つの菌種のヒト集団への感染が高頻度で起こっていることからすると、ヒトはこれらの菌種由来のCas9オルソログ、すなわちSaCas9(黄色ブドウ球菌由来)およびSpCas9(化膿性連鎖球菌由来)に対して既に適応免疫応答を持っているのではないかと我々は考えた。ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)を使ってヒト血清中の抗Cas9抗体の存在を調べたところ、SaCas9に対する抗体はドナーの78%で、またSpCas9に対する抗体はドナーの58%でそれぞれ検出された。また、SaCas9反応性T細胞はドナーの78%で、SpCas9反応性T細胞はドナーの67%で見つかり、両方のオルソログについて、抗原特異的T細胞が広く高頻度に存在することが明らかとなった。このようなT細胞を単離・増殖してから抗原で再刺激すると、Cas9特異的サイトカイン応答が認められるようになり、これらがCas9特異的であることが確認された。まとめると、これらのデータは、ヒトにはCas9に対する液性および細胞性の適応免疫応答が既に存在していることを実証するもので、この結果はCRISPR–Cas9システムが臨床治験に移行する際に考慮されるべきである。