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捜索の範囲を広げる—がんレジストリーの腫瘍追跡データを使って増殖から転移が発生する仕組みを解明する
Nature Medicine 25, 3 doi: 10.1038/s41591-019-0384-8
がん患者の診療情報や遺伝子異常などのデータを網羅的に収集したデータベースを構築するための登録システム、つまりがんレジストリーは、医師に有用なデータを提供してくれる。しかし、縦断的な大規模データが不足しているために、転移がんに対する最善の治療法を探索したり、転移が開始される仕組みを調べたりすることはこれまで難しかった。早期がんの発見や治療が進んだことなどから、がん関連死は過去20年間で約30%減少した。そして現在の研究の中心となっているのは、治療がより難しく、がんによる死亡の原因の約90%を占める転移がんである。2018年10月、米国のダナ・ファーバーがん研究所とブロード研究所は、10万人規模のがん患者からデータを集めて多様な転移がんのオープンアクセス・データベースを構築するための非営利組織を立ち上げた。他の病院や研究機関でも、新しい機械学習法を使うなどして古い医療記録を選り分け、がん患者を追跡することで、新しい転移がんレジストリーが共通のプロトコルを使って作成されつつある。そして、早くもこれらを使って治療の改善可能な点が指摘されたり、希少がんについて集団レベルの情報が得られたりといった成果が出ており、こうした動きは専門家に大いに歓迎されている。