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腸疾患:MLCK1の細胞内転用は障壁喪失を回復させ粘膜恒常性を復活させる

Nature Medicine 25, 4 doi: 10.1038/s41591-019-0393-7

上皮障壁の喪失は、腸疾患や全身性疾患を引き起こす一因となる。ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)は障壁機能障害の重要なエフェクターであり、治療標的候補だが、この酵素の阻害は好ましくない毒性をもたらす。我々は今回、MLCKのスプライスバリアントであるMLCK1が持つ独自のドメインが、帯状に細胞を囲むPAMR(perijunctional actomyosin ring)への移動を誘導することを明らかにした。ドメインの構造と複数のスクリーニングを用いて、我々はドメインに結合する小分子のdivertinを見つけだした。divertinはMLCK1の酵素機能を阻害することなく、その移動を妨げる。divertinは、腫瘍壊死因子(TNF)によって急激に引き起こされるMLCK1の移動に加えて、その下流で起こるミオシン軽鎖(MLC)リン酸化、障壁喪失、および下痢をin vitroおよびin vivoで阻害する。divertinはさらに、実験的炎症性腸疾患で起こる障壁機能の障害を回復させ、腸疾患の発症と進行を防止した。divertinは、消化器疾患への使用の他に、特定の細胞内部位への酵素の接近防止による酵素活性阻害という一般的に使える性質を持つことで、多数の機能を持つ酵素の別々の性質を安全かつ正確に標的とするための新しい枠組みとして有用となるだろう。

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