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白血病:免疫関連のシグネチャーは造血細胞移植後の白血病の免疫回避と再発を誘導する
Nature Medicine 25, 4 doi: 10.1038/s41591-019-0400-z
健常者由来の造血細胞の移植(同種造血細胞移植;allo-HCT)は、免疫細胞療法による血液がんの治癒が可能であることを示している。しかし、移植後再発はいまだに高い頻度で起こっている。移植後再発の誘因を明らかにするため、我々は急性骨髄性白血病(AML)の治療歴中の各タイムポイントにおいて、患者から精製したAML芽球のゲノムプロファイルと遺伝子発現プロファイルの解析を行った。その結果、移植後再発に特異的であり、またT細胞共刺激や抗原提示などの免疫関連過程に関わるものが多く認められる転写シグネチャーが明らかになった。2つの独立した患者コホートで、移植後再発時のAML芽球上に多数の共刺激リガンド(PD-L1、B7-H3、CD80、PVRL2)の調節異常が確認され、これらは血中のドナー由来T細胞に同時に起こる変化とよく似ていた。加えて我々は、AML芽球上のHLA-DRやHLA-DQ、HLA-DPの発現がHLAクラスII調節因子CIITAの発現低下のために高頻度で欠如することを示した。HLAクラスII発現の欠如と阻害性のチェックポイント分子の発現上昇は、ドナー由来T細胞によるAML芽球の認識を障害する新たな機序であり、それぞれIFN-γやチェックポイント阻害剤によって是正可能であることが示された。我々の結果は、T細胞を介する同種認識に関与する経路の調節異常がallo-HCT後のAML再発に特有の特徴であり、また再発の誘因であることを示しており、この知見は個別化治療へ即時応用可能と考えられる。