がん/精密医療:ゲノムとトランスクリプトームのプロファイリングはがんの精密医療を拡大する:WINTHER試験
Nature Medicine 25, 5 doi: 10.1038/s41591-019-0424-4
精密医療(precision medicine)はDNAの異常に注目するが、全ての腫瘍に扱いやすいゲノム変異が見つかるわけではない。WINTHER試験(NCT01856296)では、新鮮な生検試料から得られたDNA塩基配列解読結果(A群、236種の遺伝子パネル)、あるいはRNA発現状態(B群、腫瘍と正常組織の比較)に基づいて、患者に対する治療法を指示した。5か国の研究者で構成された臨床管理委員会が、ゲノムのマッチングを優先して治療法を推奨し、それらの中から医師が治療法を決定した。マッチングスコアは、個々の患者が以前に投与された薬剤を参照してpost-hocに計算された。DNAについては、マッチした変異の数を合計の変異数で割った値、RNAについては、発現にマッチした薬剤ランクが用いられた。全体で303人の患者で同意が得られ、そのうち107人(35%;A群に69人、B群に38人)で治療評価が可能だった。被験者の前治療歴の中央値は3であり、大腸がん、頭頸部がん、肺がんの診断が最も多かった。107人の患者のうち、6か月以上安定(SD)で、完全または部分奏効が見られた割合は26.2%だった[A群で23.2%、B群で31.6%(P = 0.37)]。無増悪生存期間について、以前の治療に対するWINTHERの比が1.5を超えた患者の割合は22.4%で、これは事前設定したプライマリーエンドポイントに達していない。少ない前治療歴、より良いパフォーマンスステータス、および高いマッチングスコアが、より長い無増悪生存期間と相関していた(多変量解析でいずれもP < 0.05)。我々の研究は、ゲノムプロファイリングとトランスクリプトームプロファイリングが共に、治療法の推奨と患者の転帰改善に役立ち、がんの個別化治療を発展させることを示している。