Perspective
パーキンソン病:パーキンソン病治療のための幹細胞を用いたドーパミン細胞置換試験の設計
Nature Medicine 25, 7 doi: 10.1038/s41591-019-0507-2
ドーパミン細胞の置換によるパーキンソン病(PD)治療の臨床研究は、30年以上にわたって試みられてきた。ヒト胎児の腹側中脳組織(hfVM)移植後の転帰はばらつきが大きく、一部の患者では長年にわたって抗PD治療が不要となる一方で、応答が見られなかったり、移植片による運動障害などの重大な副作用を生じたりすることがある。そのため、このような試験を行う際の最善の方法の再評価が行われることになり、EU資金によってヨーロッパの複数の研究機関が参加して、胎児ドーパミン細胞を用いた同種移植試験が新たに実施された。TRANSEUROと呼ばれるこの新たな試験(NCT01898390)は、同程度の評価を受けていた軽症PD患者からなる大規模観察コホートから、複数人を無作為に選抜してhfVM移植を行う非盲検研究である。TRANSEURO試験は現在進行中であり、若年発症の初期段階PD患者の大規模多施設観察研究への被験者選出登録と、11人の患者でのhfVM移植の両方が完了している。TRANSEUROの完了は2021年以降になると予想されるが、TRANSEUROの設計に対する論理的根拠とともに、これまでの過程で得た知識を共有することが、研究者に有益な情報を与え、将来の臨床試験のためにヒト多能性幹細胞に由来するドーパミン産生細胞の移植計画の作成を容易にすると、我々は考えている。