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がん治療:チェックポイント阻害剤が原因の致死的脳炎でのクローナルなEBV様記憶CD4+ T細胞活性化の症例報告

Nature Medicine 25, 8 doi: 10.1038/s41591-019-0523-2

チェックポイント阻害剤は多くの転移性がんで持続性のある応答を引き起こすが、免疫関連有害事象(irAE)の併発によりその有効性が制限されている。irAEは臓器系に特異的に作用することがあり、症状は軽症で自然治癒するものから劇症で致死的なものまで幅広い。irAEの基盤となる分子機序についてはよく分かっていない。本論文では、転移性黒色腫患者でのPD-1(programmed cell death receptor 1)治療中に起こった脳炎の死亡症例について報告する。組織学的解析によって、ロバストなT細胞浸潤と顕著なPD-L1(programmed death ligand 1)発現が明らかになった。次いで我々は、世界的な医薬品安全性監視データベース(多数種のがんにわたる)でチェックポイント阻害剤治療に関連する脳炎の209の症例報告を見つけ出し、致死率は19%であることを明らかにした。我々は、この再発性で劇症のirAEを解明するために、インデックス・ケースと2件の追加症例についてさらなる解析を行った。空間的解析およびマルチオミクス解析により、活性化された記憶CD4+ T細胞が、炎症を起こしている病変部に非常に多く集積していたことが突き止められた。また、活性化された細胞傷害性(CD45RO+GZMB+Ki67+)記憶CD4細胞に局在する、オリゴクローン性の高いT細胞受容体レパートリーを明らかにした。病変部ではエプスタイン・バーウイルス(EBV)特異的T細胞受容体やEBV+リンパ球が見つかり、これらがインデックスケースでの神経炎症の一因であったと推定された。まとめると、今回調べた3つの症例によって、CD4+およびCD8+ T細胞が、チェックポイント阻害剤が関連する免疫性脳炎の原因であることが突き止められた。

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