Editorial
ビッグデータにビッグな希望
Nature Medicine 26, 1 doi: 10.1038/s41591-019-0740-8
この10年間で、医療に関連する大規模でマルチモーダルな情報は爆発的に増加した。医療記録のデジタル化が進み、分子診断技術も普及し、ウエアラブル機器が広く使われるようになったことなどに伴って、解析のために入手可能なデータの量は膨大なものとなっている。テラバイト規模の情報の解析はすでに個人レベルでも行われるようになっていて、疾患リスク因子の発見やもっと正確な診断と予後予測が可能になり、「健康であること」が何を意味するのか、その定義も変わりつつある。こうした大転換期にあって、本誌2020年1月号には、ビッグデータを使う手法が医学研究で発揮する大きな可能性を示し、ビッグデータ解析によってもたらされた新発見や新たな考察を述べた論文を集めた特集、「FOCUS:ビッグデータ」が掲載されている。
ビッグデータ解析はすでに臨床ケア分野にも進出しつつあり、高い期待が寄せられている。医療分野でビッグデータがどのようなことができるかについてはすでにその一端が見え始めていて、デジタルイノベーションや多様なヘルスケア情報から健康と病気に関する新たな知見を得るための対策を講じる動きもある。このような進展を受けて、健康関連データセットを考察する新規な方法や、スケールの大きな思考法、全く新しいデータの生成などに向けて、従来と異なる「型破りな」考え方を研究者コミュニティー全体で奨励していくべきだと我々は考えている。だがこうした中で常に忘れてはならないのは、「健康における不平等の解消をまず第一に考えること」であるのに変わりはない。「次なる革命」であるこちらの実現も、我々は期待している。