Letter
創薬:ポリジーン構造は薬物性肝障害に対する潜在的な脆弱性を知らせる
Nature Medicine 26, 10 doi: 10.1038/s41591-020-1023-0
薬物性肝障害(DILI)は、薬剤開発プログラムの打ち切りや医薬品の市場からの撤去の主要な原因だが、その理由の1つはリスクのある患者を特定できないことである。我々は、これまでに行われた大規模なゲノム関連研究で突き止められた多数のゲノム規模座位の影響を集約することにより、DILIのためのポリジェニックリスクスコア(PRS)を開発した。PRSは、ファシグリファム、アモキシシリン/クラブラン酸あるいはフルクロキサシリンによる治療を受けた患者や、10種類を超える薬剤による治療を受けた複数のドナーからの初代肝細胞および幹細胞由来オルガノイドで、DILIに対する感受性を予測した。パスウェイ解析からは、UPR(unfolded protein response)や酸化ストレスなど、これまでにDILIに関わるとされてきた過程が明らかになった。in silicoスクリーニングでは、PRSが高い患者の肝細胞で見られるトランスクリプトームシグネチャーを生じさせる化合物が特定され、このことから機構的つながりが裏付けられ、新薬候補の安全性のための新規スクリーニング法が示唆された。この遺伝子、細胞、オルガノイドおよび個体規模での証拠は、DILIに対する脆弱性の基盤にある肝細胞レベルでのポリジーン構造を明確にしており、将来の機構的研究を助けるだろう。さらに、今回提唱する「polygenicity-in-a-dish」戦略は、より安全で効率よく、かつロバストな臨床試験を設計するのに役立つ可能性がある。