トランプ政権下での米国の生物医学・医学研究

米国では大統領選挙が迫る中、トランプ大統領政権下での生物医学・医学研究に関する科学政策に対する人々の感情は、いつもにも増して多様なものとなっている。トランプ大統領は科学予算の大幅削減を打ち出し、反科学的なわざとらしい態度を見せつけ、科学的根拠や実現性を無視した発言を続けてきた。証拠と論理に基づいて判断を下すのとはほど遠いその姿勢は、科学を信頼し、研究を支援するという国民の態度を変化させ、さらには社会を変容させつつあると考えている人々は少なくない。

しかし、この4年間は、最良とはとても言えないが、最悪ではないと評価している人々もいる。トランプ政権の科学政策で最優先とされた人工知能や量子情報科学などは、多くの領域にわたって経済を成長させるだけでなく、COVID-19パンデミック対策など公衆衛生や生物医学研究にも大きな可能性を持つと考えられている。大統領の思惑通りに科学の価値が自明でなくなった米国社会は、トランプ氏が掲げるこのような国家的科学戦略に対して、どのような審判を下すのだろうか。