COVID-19:重症COVID-19の回復期血漿療法:傾向スコアによってマッチングさせた対照研究
Nature Medicine 26, 11 doi: 10.1038/s41591-020-1088-9
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はヒトの新規な疾患で、有効な治療法はほとんどない。COVID-19から回復した患者から提供された回復期血漿は、血液の無細胞成分で、抗体を含んでおり、その中にはSARS-CoV-2を特異的に認識する抗体もある。このような抗体は、SARS-CoV-2に感染した患者に輸注すると抗ウイルス効果を発揮し、患者自身の液性免疫応答が発動する前にウイルス複製を抑制すると考えられている。回復者由来のウイルス特異的抗体は、新興感染症に対して最初に利用可能となる治療法となることが多く、新規な抗ウイルス薬やワクチンが開発途中である際の当座の治療法となる。今回我々は、傾向スコアによってマッチさせた症例–対照後ろ向き研究によって、米国ニューヨーク市のマウントサイナイ病院で重症もしくは生命が危険に瀕しているCOVID-19患者39人で行われた回復期血漿療法の有効性を評価した。血漿注入後14日目の酸素要求量が悪化したのは、血漿注入を受けた患者の17.9%であったのに対して、傾向スコアによってマッチさせた対照のCOVID-19入院患者では28.2%であった[調整オッズ比(OR)は0.86、95%信頼区間(CI)は0.75~0.98、カイ二乗検定P値は0.025]。また、血漿注入を受けた患者では生存率も改善した[調整ハザード比(HR)は0.34、95%信頼区間(CI)は0.13~0.89、カイ二乗検定P値は0.027]。回復期血漿は、COVID-19に対しておそらく有効と考えられるが、適切にデザインを強化した無作為化対照試験を行うことが必要であろう。