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遺伝子治療:デュシェンヌ型筋ジストロフィーのブタおよびヒトモデルでの骨格筋および心筋の障害の体細胞遺伝子編集による緩和
Nature Medicine 26, 2 doi: 10.1038/s41591-019-0738-2
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィンをコードするDMD遺伝子のフレームシフト変異によって引き起こされ、これが患者での重症の筋障害と心不全につながる。塩基配列特異的ヌクレアーゼによる体細胞遺伝子編集は、DMD読み枠回復のための新たな治療選択肢であって、短縮されてはいるが機能のほとんどが備わっているジストロフィンタンパク質の発現につながる。今回我々は、DMDのエキソン52を欠損する(DMDΔ52)ブタモデルに加えて、これに対応する患者由来の誘導多能性幹細胞モデルでも、この方法を検証した。DMDΔ52ブタでは、インテインスプリットCas9とエキソン51に隣接する配列を標的とするガイドRNA対を搭載するアデノ随伴ウイルス血清型9(AAV9-Cas9-gE51)ベクターの筋肉内注射は、短縮型ジストロフィン(DMDΔ51-52)の発現を誘導し、骨格筋の機能を改善した。さらに、AAV9-Cas9-gE51の全身投与は、横隔膜および心臓などの筋肉での広範囲にわたるジストロフィン発現につながり、生存期間を延長し、不整脈受攻性を低下させた。DMDΔ52を欠損する患者の誘導多能性幹細胞由来の筋芽細胞と心筋細胞でも同様に、AAV6-Cas9-gE51を介したエキソン51の切除はジストロフィン発現を回復させ、骨格筋での筋管形成を軽減し、心筋細胞での異常なCa2+ハンドリングと不整脈易罹患性を低下させた。今回のトランスレーショナルモデルで示された、Cas9が仲介するエキソン切除によりDMD病態を改善する効果は、この重篤な病気の患者に新規な治療法への道を開くものだ。