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パーキンソン病:若年発症性パーキンソン病のiPSCモデル作製により明らかになった疾患の分子シグネチャーと新規治療候補
Nature Medicine 26, 2 doi: 10.1038/s41591-019-0739-1
50歳未満で発症するパーキンソン病は若年発症性パーキンソン病(YOPD)と呼ばれ、パーキンソン病全症例の約10%を占める。YOPDの症例の一部は、既知の遺伝的変異と関連付けられているが、ほとんどの症例にはこうした関連が認められない。今回我々は、対照群の参加者と既知変異を持たないYOPD患者に由来する誘導多能性幹細胞を作製した。YOPD患者由来の誘導多能性幹細胞では、ドーパミンニューロンを含む培養物へ分化させた後に、可溶性αシヌクレインタンパク質とリン酸化型プロテインキナーゼCαの蓄積増加とLAMP1などのリソソーム膜タンパク質量の減少が見られた。リソソーム機能の活性化因子を調べたところ、PEP005などの特定のホルボールエステルがαシヌクレインやリン酸化型プロテインキナーゼCαのレベルを低下させ、LAMP1量は増加させることが分かった。αシヌクレインの減少は、プロテアソームによる分解を介して起きていた。また、マウスの線条体へPEP005を送達した場合にも、in vivoでのαシヌクレイン産生が低下した。誘導多能性幹細胞に由来するドーパミン作動性培養細胞は、既知のパーキンソン病関連変異を持たないYOPD患者のシグネチャーを明らかにしていて、YOPDに対する他の遺伝的関与の存在が考えられる。このシグネチャーは、特定のホルボールエステルにより正常化され、これらのホルボールエステルは有望な治療薬候補である。