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血管肉腫:血管肉腫プロジェクトでは患者参画研究の実施によって希少がんでのゲノミクス研究や臨床研究での発見が可能となった

Nature Medicine 26, 2 doi: 10.1038/s41591-019-0749-z

希少がんは成人腫瘍の25%を占めているにもかかわらず、その発生率の低さと患者集団が地理的に分散していることで研究が困難であり、希少がん患者の臨床的ニーズはかなりの部分が満たされていない。我々は、米国での年間発生数が300例の肉腫である血管肉腫に注目して、患者がパートナーとして研究にオンライン参加する患者参画研究(patient-partnered research)という手法が、このような難問を克服できるかどうかを評価した。本論文では、血管肉腫プロジェクト(ASCプロジェクト)の開発について報告する。これは、米国とカナダの患者が臨床情報と研究用の生体試料を遠方から共有できるようにするイニシアチブである。このプロジェクトでは、腫瘍試料および生殖細胞系列試料についての臨床的に注釈付けられたゲノムデータを継続的に作成および公開する。18か月間に338人の患者がASCプロジェクトに登録し、これは血管肉腫の全患者の大きな割合を占める。47の腫瘍の全エキソーム塩基配列解読(WES)から、頻繁に変異が見られる遺伝子が明らかになり、その中にはKDRTP53PIK3CAが含まれていた。PIK3CAを活性化する変異は、主に原発性乳房血管肉腫で観察され、治療の根拠が示唆された。頭部、頸部、顔面および頭皮(HNFS)の血管肉腫は、高い腫瘍変異量、および顕著な紫外線損傷変異シグネチャーと関連付けられ、このことからHNFS血管肉腫患者の一部は紫外線損傷が原因因子である可能性と、免疫チェックポイント阻害が有効である可能性が示唆された。診療記録の再調査により、HNFS血管肉腫の患者2人に対して抗PD-1(programmed death-1 protein)抗体の適応外治療使用が行われ、優れた効果があったことが明らかになり、免疫チェックポイント阻害がHNFS血管肉腫の治療手段であることがはっきり示された。患者が協力者として参画するこの手法は、血管肉腫患者の病因と有効と考えられる治療法を見いだす機会を増やすものだ。今回の概念実証研究により、患者の研究への直接参加を促すことが、希少疾患における障壁を克服し新たな発見を可能にするのにつながる可能性が実証された。

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