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がん治療:化学療法によって誘導される回腸腺窩のアポトーシスと回腸マイクロバイオームは近位大腸がんの免疫監視と予後を定める
Nature Medicine 26, 6 doi: 10.1038/s41591-020-0882-8
大腸がん(CC)の予後は、濾胞性ヘルパーT(TFH)細胞などの腫瘍浸潤リンパ球と化学療法によって誘導される免疫応答の有効性によって影響を受ける。腸内微生物がTFH細胞によって引き起こされる応答の誘発に寄与しているかどうかはまだ明らかでない。本論文では、回腸の微生物相が、大腸がん患者やマウスでの回腸上皮細胞(IEC)の免疫原性細胞死と免疫寛容原性細胞死、およびTFH細胞の集積を支配していることを示す。マウスでIECのアポトーシスを抑制すると、化学療法によって誘導される対CC免疫監視が損なわれた。CCに対して防御的な免疫応答は、回腸でのBacteroides fragilisやErysipelotrichaceae綱細菌の常在と関連していた。このような共生細菌の存在下では、アポトーシスを起こした回腸IECは、インターロイキン1R1やインターロイキン12に依存してPD-1+ TFH細胞を誘導した。回腸マイクロバイオームは、マイクロサテライト不安定性とは無関係に、CCでの化学療法とPD-1阻害の有効性を支配した。これらの知見は、回腸での免疫原性のアポトーシスが化学療法を受けたCCの予後に関わっていることを実証するものである。