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がん:がんモデルでの免疫マクロ環境の全身性機能障害と可塑性
Nature Medicine 26, 7 doi: 10.1038/s41591-020-0892-6
がんでの免疫応答を支配する諸因子についての理解はまだ不完全であり、患者に役立ってはいない。今回我々は、マスサイトメトリーを用いて、8種類のマウス腫瘍モデルで5種の組織にわたって、腫瘍の形成に対応する全身性免疫の全体像を明らかにした。全身性の免疫は、モデルにわたって、また時間経過によって大きく変化し、乳がん患者の末梢血では一貫した所見が得られた。末梢組織での変化は、腫瘍微小環境での変化とは異なっていた。腫瘍を経験した免疫系を持つマウスは、ウイルスや細菌の感染時にT細胞活性化が低下するなど、直交的チャレンジに対する応答が低減していた。こうした状況下では、抗原提示細胞(APC)による応答はより弱いが、APCの活性化を促すことでT細胞の活性が回復した。全身性の免疫変化は、外科的腫瘍切除によって元に戻り、また多くはインターロイキン1や顆粒球コロニー刺激因子の阻害によって防止され、全身的な免疫状態には著しい可塑性があることが明らかになった。これらの結果によって、腫瘍の形成が免疫のマクロ環境の構成や機能を動的に作り変えることが実証された。