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COVID-19:重症COVID-19患者で見られる末梢免疫応答の単一細胞アトラス
Nature Medicine 26, 7 doi: 10.1038/s41591-020-0944-y
世界全体で300万人以上に感染したSARS-CoV-2は新型コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の地球規模のパンデミックを引き起こし、COVID-19の病態生理学的性質の解明を進めることは喫緊の課題となっている。COVID-19患者の約20%は病状が重篤となり、また患者の5%は集中治療が必要となる。重篤な症状は、炎症誘発性サイトカイン(炎症性単球の一部によって産生される可能性がある)のレベル上昇やリンパ球の減少、T細胞疲弊など、末梢免疫状態の変化と関連付けられている。重症COVID-19での免疫病理もしくは防御免疫の誘導につながる可能性がある末梢免疫細胞中の経路を明らかにするために、我々は、単一細胞RNA塩基配列解読法(scRNA-seq)を用いて、COVID-19で入院した患者7人(うち4人は急性呼吸促迫症候群となった)と対照となる健常者6人からの末梢血単核球(PBMC)のプロファイリングを行った。COVID-19では末梢免疫細胞の表現型の再構成が起こっていることが明らかになった。その中には、異種性のインターフェロン誘導遺伝子シグネチャー、HLAクラスIIの発現低下、機械換気を必要としている急性呼吸器不全の患者で認められる形質芽細胞と近縁のように見える好中球集団の発生などが含まれる。末梢の単球やリンパ球は大量の炎症誘発性サイトカインを発現していないことが分かったのは重要である。今回の研究により、重症COVID-19に対する末梢免疫応答の細胞アトラスが得られた。