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がん/心疾患:心筋梗塞は自然免疫の再プログラム化を介して乳がんの進行を加速する

Nature Medicine 26, 9 doi: 10.1038/s41591-020-0964-7

肥満や手術のような慢性あるいは急性のストレス要因による全身的恒常性の破綻は、がんの病態形成を変化させる。がん患者、特に乳がん患者では、治療の毒性や生活習慣行動の変化によって、心血管疾患のリスクが増加することがある。乳がんでの心血管イベントのリスクおよび発生の増加は十分に確証されているが、そのようなイベントががんの病態形成に影響を与えるかについては知られていない。本論文では、心筋梗塞(MI)がマウスとヒトで乳がんの増殖やがん特異的死亡を加速させることを示す。乳がんのマウスモデルで、MIは骨髄リザーバーでのLy6Chi単球の表現型を免疫抑制型へとエピジェネティックに再プログラム化し、この表現型は循環中と腫瘍内の両方の単球において転写レベルで維持されていた。同時に、MIは循環中のLy6Chi単球の数とその腫瘍への集合を増加させ、このような細胞を枯渇させるとMIによる腫瘍増殖が見られなくなった。さらに、がんの診断後に心血管イベントを経験した早期乳がん患者では、再発とがん特異的死亡のリスクが上昇していた。これらの前臨床および臨床での結果によって、MIは全身の恒常性に変化を引き起こし、疾患横断的なシグナル伝達を引き起こして、これが乳がんを加速させることが実証された。

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