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COVID-19:CD8+ T細胞はCOVID-19を併発した血液がん患者の生存に寄与する
Nature Medicine 27, 7 doi: 10.1038/s41591-021-01386-7
がん患者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡率が高いが、臨床転帰に大きく影響する免疫パラメーターはまだ明らかにされていない。COVID-19で入院したがん患者100人からなるコホート中で、血液がんの患者は固形がんの患者と比べて死亡率が高かった。別の2つのコホートで、フローサイトメトリーと血清学的解析によって、固形がんの患者とがんに罹患していない患者は急性COVID-19罹患中に同じような免疫表現型を示すことが明らかになったのに対して、血液がんの患者ではB細胞と重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)特異的な抗体応答に障害があることが分かった。COVID-19にも罹患した血液がん患者では液性免疫の障害や高い死亡率が見られたのにもかかわらず、CD8 T細胞の数が多い患者は、抗CD20療法を受けた患者を含めて、生存率が良好であった。さらに、血液がんの患者の77%で、SARS-CoV-2特異的なT細胞応答が検出された。従って、CD8 T細胞は、液性免疫が不完全な場合にCOVID-19からの回復に影響を与える可能性がある。これらの観察結果は、ワクチン接種に対するCD8 T細胞応答は、血液がんの患者を、液性免疫応答が限られている場合であっても、防御する可能性があることを示唆している。