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プロバイオティクス:炎症性腸疾患治療のための自己調節可能な改変型酵母プロバイオティクス
Nature Medicine 27, 7 doi: 10.1038/s41591-021-01390-x
炎症性腸疾患(IBD)は、消化管の複雑な慢性炎症性疾患である。共生微生物相と宿主細胞が産生した細胞外アデノシン三リン酸(eATP)はプリン作動性シグナル伝達を活性化し、腸の炎症と病態を促進する。腸管炎症にeATPが果たす役割に基づいて、我々は酵母をベースとした組換えプロバイオティクスを開発した。これは、eATP感受性が最大で1000倍に上昇したヒトP2Y2プリン作動性受容体を発現する。また、この組換え型P2Y2受容体の活性化をATP分解酵素アピラーゼの分泌に連結し、炎症誘発性分子を感知し、それを中和するために、その量に応じた自己調節型の応答をすることができる組換え型酵母プロバイオティクスを作出した。自己調節が可能なこのような酵母プロバイオティクスは、IBDのマウスモデルで腸の炎症を抑制し、腸管の繊維化やディスバイオーシスを減らす。その有効性は、通常は顕著な有害事象を伴う標準治療の場合と同程度、あるいはより高いことが明らかになった。我々は、指向性進化と合成遺伝子回路を組み合わせることで、IBDに加えて他の炎症性疾患の治療にも使える可能性のある独自の自己調節型プラットフォームを開発した。