Review Article
インスリン:インスリンの100年:糖尿病治療の過去、現在、未来を祝す
Nature Medicine 27, 7 doi: 10.1038/s41591-021-01418-2
2021年は、BantingとBestのインスリン発見という画期的な報告から100年目となる。この発見とインスリンが速やかに臨床展開されたことで、それまで致死的な病気であった1型糖尿病が、医学により実際上管理可能な慢性疾患へと変わった。本総説では、医学史におけるこの重大な出来事につながった研究、すなわち糖尿病の病態生理学にインスリンが担う役割、インスリンの分子特性、インスリンの臨床使用の解明の進展などに加えて、さらにそれらを基盤として築かれた重要な成果についても述べる。さらに、こうした成果をインスリン療法の効果を経験した患者の視点から見直し、過去100年間にわたるインスリンの薬物動態学的性質と送達の進歩からも再考する。そして、インスリン療法と糖尿病治療の将来に加えて、将来取り組むべき難問について考察する。このような検討によって、この革新的な発見が持つ可能性を十分に引き出すことが可能となるだろう。