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遺伝子治療:無細胞DNAからベクターの組み込み部位を検索する

Nature Medicine 27, 8 doi: 10.1038/s41591-021-01389-4

遺伝子治療(GT)は、他の方法では治療できない疾患の治療法として新たな関心を急速に集めている。複数のGT医薬品がすでに市場に出ており、さらに多くのGT医薬品が選択された適応症を対象とする臨床試験に入っている。ベクターの組み込みに基づくクローン追跡技術を使えば、GTを受けている患者の血液中の改変細胞の運命を監視でき、また、このような過程の安全性と有効性の評価が可能になる。しかし、調べられる細胞の数が限られていることと、侵襲的な生検を行わずに末梢器官に存在する細胞を調べることは実際的ではないため、この手法では遺伝的改変細胞のクローンのレパートリーや動態の部分的なスナップショットしか得られず、安全性の読み出しとしての予測力は低い。我々は、リキッドバイオプシーを用いて組み込み部位の塩基配列を解読する方法であるLiBIS-seq(liquid biopsy integration site sequencing)を開発した。LiBIS-seqは、複数の組織中の死にかけている細胞によって血流中に放出された無細胞DNAからベクター組み込み部位を定量的に検索するために最適化されたポリメラーゼ連鎖反応技術である。この手法により、in vivoでの肝臓指向性GTの長期的な監視や造血幹細胞GTを受けている患者でのクローン追跡が可能になり、固形組織での遺伝的改変細胞のクローン組成や代謝回転についての理解が向上し、また、循環血液細胞だけに基づく従来の解析とは対照的に、末梢組織で異常に増殖しているベクター標識クローンのより早い検出が可能になった。

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