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mtDNAバリアント:ミトコンドリアDNAバリアントはN-ホルミルメチオニン、タンパク質恒常性と遅発性のヒト疾患リスクを調節する
Nature Medicine 27, 9 doi: 10.1038/s41591-021-01441-3
ミトコンドリアDNA(mtDNA)のバリアントはヒトの遅発性疾患のリスクに影響を及ぼすが、その理由はほとんど明らかになっていない。我々は、1万6220人の健常者で、mtDNAバリアントに関する5689の血液由来バイオマーカーについて、仮説フリーでの解析を行い、mtDNAのハプログループUkとH4を特徴付けているバリアントが、循環中のN-ホルミルメチオニン(fMet、ミトコンドリアでのタンパク質の翻訳を開始させる)の血中レベルを調整していることを明らかにした。ヒトの細胞質雑種(cybrid)系列では、fMetがミトコンドリアと細胞質のタンパク質を転写、翻訳後修飾、N-degron経路を介するタンパク質分解によって複数のレベルで調節して、mtDNAハプログループ間での既知の違いを消失させている。これとは別の1万1966人では、fMetレベルが全死因死亡率と、複数の一般的な心血管疾患の疾患リスクに関わっていた。まとめると、今回の知見はfMetが細胞のタンパク質恒常性に対する多面的な影響を介して、加齢に伴ってよく見られる疾患に重要な役割を担っていることを示している。