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マラリアワクチン:西ケニアでの乳幼児のマラリアに対するPfSPZワクチンの安全性、免疫原性および有効性:二重盲検無作為化プラセボ対照第2相試験

Nature Medicine 27, 9 doi: 10.1038/s41591-021-01470-y

放射線弱毒化熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト(PfSPZ)ワクチンは、マラリアに罹患したことのない成人で熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)感染を防御する。防御にはT細胞を介する免疫が必要であり、免疫はヒトではワクチン接種後すぐに誘導されることが、前臨床研究で明らかになっている。しかし、過去にマラリアに曝露されていると、成人では免疫応答やワクチン効果(VE)が抑制されることがある。我々は、マラリアに対する以前の曝露がより少ない乳幼児では免疫や防御が改善されると考えた。まず西ケニアのマラリア伝播が盛んな条件下にある乳幼児でのPfSPZワクチンの安全性、耐容性、免疫原性と有効性を調べるため、5~12か月の乳幼児336人で多群無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った(NCT02687373)。1グループは84人の乳幼児からなり、各グループはそれぞれ4.5  ×  105、9.0  ×  105および1.8  ×  106のPfSPZワクチン、もしくは生理食塩水を、8週間隔で3回投与された。このワクチンは耐容性が十分高く、ワクチン投与群の52人(20.6%)とプラセボ投与群の20人(23.8%)が、ワクチン接種後28日以内にワクチンに関連する非自発的有害事象(AE)を経験し、ほとんどは軽症であった。グレード3とされる非自発的AEは、ワクチン群で1件(0.4%)、プラセボ群で2件(2.4%)であった。けいれんは最高用量群でより高頻度に起こり、対照群の6.0%と比較して14.3%であったが、大部分はマラリアによるものだった。6か月目では、いずれの用量群でも熱帯熱マラリア原虫感染に対する有意な防御は認められなかった(9.0  ×  105用量群でのVEは−6.5%、P = 0.598、本研究の主要な統計学的評価項目である)。最高用量群での最後の投与の3か月後の臨床的マラリアに対するVEは、45.8%(P = 0.027)だった(探索的評価項目)。最低用量群と最高用量群で、6か月目のVEに相関する抗体応答に用量依存的な増加があった。T細胞応答は、全ての用量群で検出されなかった。成人でのPfSPZワクチンのT細胞免疫の誘導や防御と相関性があるとされてきたVδ2+Vγ9+ T細胞の出現頻度は低かった。これらのデータは、PfSPZワクチンによって誘導されるT細胞免疫は年齢に依存しており、Vδ2+Vγ9+ T細胞の頻度によって影響を受ける可能性を示唆している。これらの乳幼児では6か月目に有意なVEが見られなかったので、このようなワクチン接種法は、この年齢群ではこれ以上追究されないだろう。

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