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神経変性疾患:アンチセンスオリゴヌクレオチドによるFUS発現のサイレンシングは筋萎縮性側索硬化症の治療法となる
Nature Medicine 28, 1 doi: 10.1038/s41591-021-01615-z
RNA結合タンパク質であるFUS(Fused in sarcoma)は、まれで侵襲性の高い型の筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症(FTD)と遺伝学的にも病理学的にも関連がある。ALS-FTDで変異型FUSが神経変性を引き起こす機構を調べるために、我々はALSに関連した変異体であるFUSP525LとFUSΔEX14に相当するタンパク質を発現する一連のFUSノックインマウス系統を作出した。FUS変異マウスでは、用量依存的な毒性機能が獲得された結果として、進行性で年齢に依存する運動ニューロン喪失が起こり、FUSとそれに近縁のRNA結合タンパク質が不溶性となることが分かった。このALS-FUSの疾患相当マウスモデルでは、対立遺伝子非特異的FUSアンチセンスオリゴヌクレオチドであるION363が効率良くFusをサイレンシングし、脳と脊髄での生後FUSタンパク質レベルを低下させ、運動ニューロンの変性を遅らせることが明らかになった。FUSP525L変異を持つALS患者で、ION363の髄腔内注入を繰り返すと、中枢神経系の野生型および変異型FUSレベルが低下し、その結果、疾患の病理学的な特徴であるFUS凝集体の量が著しく減少するという予備的な証拠が得られた。我々は、マウスの遺伝学的研究とヒトの臨床研究でFUSのサイレンシングがFUS依存的なALSおよびFTDの治療戦略となることを裏付ける証拠を示した。