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HIV:HIV-1感染者で抗レトロウイルス療法開始時に実施される3BNC117とロミデプシンによる早期介入 ─ 第1b/2a相無作為化試験

Nature Medicine 28, 11 doi: 10.1038/s41591-022-02023-7

ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)のリザーバーを減らして、抗レトロウイルス療法(ART)なしでウイルス学的制御を誘導する試みは、大部分が失敗に終わっている。4要因デザインを用いた今回の第1b/2a相非盲検無作為化コントロール試験では、HIV-1と新たに診断された患者に対して、ART開始直後にCD4結合部位を有するモノクローナル抗HIV-1抗体3BNC117を投与し、続いてヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるロミデプシンを投与する早期介入が、HIV-1感染の経過を変化させるかどうかを調べた(NCT03041012)。この試験は、デンマークの5つの病院と英国の2つの病院で実施された。共主要評価項目は、初期のウイルス減衰動態およびインタクトなHIV-1プロウイルスを含むCD4+ T細胞数についてのベースラインから365日目までの変化の解析であった。副次評価項目は、感染したCD4+ T細胞数およびウイルス特異的CD8+ T細胞免疫のベースラインから365日目までの変化、ART前の血漿HIV-1の3BNC117に対する感受性、安全性と耐容性、400日目に開始される12週間の分析的ART中断の間のウイルス学的制御が消失するまでの時間であった。55名の新たに診断されたHIV-1患者(女性5名、男性50名)は治療に無作為に割り付けられ、早期3BNC117投与は、ロミデプシンの有無にかかわらず、血漿のHIV-1 RNAの減少速度を、ARTのみの場合に比べて増大させることが分かった。さらに3BNC117投与は、ARTのみの場合と比較すると、感染細胞のクリアランスを促進した。全てのグループで、インタクトなHIV-1プロウイルスを含むCD4+ T細胞の数が有意に減少した。365日目には、3BNC117とロミデプシンを併用する早期介入は、HIV-1 Gag特異的CD8+ T細胞免疫の(ARTだけと比べた場合の)増強と関連付けられた。3BNC117について観察されたウイルス学的、また免疫学的影響は、ART前の血漿HIV-1エンベロープ配列が抗体感受性を示す患者で最も顕著だった。今回の結果に性差はなかった。有害事象は軽度から中等度であり、グループ間で同程度であった。20名の参加者での12週間の分析的ART中断時には、感受性ウイルスを持っていて、3BNC117投与を受けた参加者は、他の参加者よりもARTなしのウイルス学的制御を維持する可能性が有意に高かった。ART開始時の3BNC117投与は、血漿ウイルスや感染細胞の排除を増強し、HIV-1特異的CD8+ T細胞免疫を高め、3BNC117感受性ウイルス保持者の中では、ARTなしでのウイルス学的制御を持続させると我々は結論する。これらの知見は、ART開始時での介入治療が、長期間にわたるHIV-1持続を制限する戦略であることを強く裏付けている。

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