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失敗から学びながら進むアルツハイマー病治療法開発への長い道のり
Nature Medicine 28, 11 doi: 10.1038/s41591-022-02062-0
これまでアルツハイマー病の臨床試験の99%は失敗に終わっている。これまで試験された多数の薬剤のほとんどは疾患修飾薬であり、失敗の要因としては介入が遅すぎた、標的や薬剤の選択が間違っていたなど数多くが挙げられる。主要な標的となってきたアミロイドは、その沈着や蓄積を防いでも認知機能の改善は見られず、こうした薬の臨床的有用性もまだ認められていない。だが最近は、炎症やタウタンパク質、あるいはウイルスを標的とする治療も登場してきている。また、この病気のさまざまな生物学的特徴を検出するバイオマーカーが開発されており、症状が出る前に、真にアルツハイマー病のみを対象とした早期の複合治療が可能になるかもしれない。アルツハイマー病はあまりに複雑なため、単一の特効薬を探すのではなく、創薬研究の多くは複数の標的を同時に治療する方向に向かっている。精密医療との併用で治療はより個別化され、アルツハイマー病は末期症状ではなく、管理可能な慢性疾患になる可能性がある。最近続いた新薬の失敗は、やがて実を結ぶ学習過程の一部であり、試行錯誤を重ねなければ治療法は見つからないと考えている研究者も少なくない。