Editorial
糖尿病の公平な精密医療を目指して
Nature Medicine 28, 11 doi: 10.1038/s41591-022-02105-6
1980年代から糖尿病は4倍に増え、2021年の時点では世界で約5億3700万人が糖尿病を患っている。その90%は2型糖尿病であり、健康・社会・経済的コストも増大している。また、2型糖尿病の約75%は低・中所得国(LMIC)で発症している。世界保健機関は2021年に、社会環境と糖尿病医療の整備を進めるための包括的なアプローチを発表したが、こうしたハイレベルなプログラムだけでは対策には足りない。特に2型糖尿病は原因や臨床経過が不均一で、治療への反応にも個人差があり、一律的な対応では不十分と考えられる。糖尿病の精密医療は、多次元データを統合して、生物学、環境、状況における個人差を考慮しながら、予防、診断、治療の最適化を行うというものだが、必要なデータ自体が特定の、多くはヨーロッパ系の集団に基づくものであることがまず大きな問題であり、近い将来、これが多くのLMICで実行可能になるとは考えにくい。そのため、特定の集団の生物学的特徴に合わせた、文化的に受け入れられやすい新しい糖尿病精密医療モデルを開発する必要がある。これらの問題を考え合わせると、LMICの人々が地域の研究に参加したり、それを推進したりしない限り、世界的な目標達成は難しい。