Article

神経変性疾患:Aβ42/40、p-tau231およびp-tau217がアルツハイマー病の治験選択と疾患モニタリングで果たす異なる役割

Nature Medicine 28, 12 doi: 10.1038/s41591-022-02074-w

アルツハイマー病(AD)の病状の指標となる血液バイオマーカーは、この疾患の前臨床段階と症候性段階の両方で変化する。そのため、ADの病状を明らかにする場合と疾患の進行を監視する場合では最適のバイオマーカーが異なっている可能性がある。疾患進行過程での認知機能の変化や脳の萎縮の変化と相関する血液バイオマーカーならば、成功しそうな介入法を見つけ出し、それによって効率の良い治療法の開発を進めるための臨床試験で使用できるだろう。また、疾患修飾治療での使用が承認されれば、血液から得られた効率の良いバイオマーカーからは、臨床診療での治療の実施や管理に役立つ情報が得られると思われる。BioFINDER-1コホートでは、血漿のリン酸化タウ(p-tau)231とアミロイドβ(Aβ)42/40の比は、アミロイド性疾患の病状の閾値が低いほど変化が大きかった。しかし、長期的にはp-tau217のみが、疾患の前臨床段階と症候性段階の両方で、4–6年にわたって顕著なアミロイド依存性の変化を示し、p-tau231、p-tau181、Aβ42/40、GFAP(グリア繊維酸性タンパク質)、NfL(ニューロフィラメント軽鎖)ではそのような変化は見られなかった。p-tau217の長期的な増加のみが、前臨床ADでの臨床的悪化や脳萎縮とも関連していた。p-tau217の選択的で長期にわたる増加や、それと認知機能低下や脳萎縮との関連は、独立した1つのコホート(Wisconsin Registry for Alzheimer’s Prevention)でも確認された。これらの知見は、血漿バイオマーカーと疾患発症との関連には差異があることを裏付けており、またp-tau217が前臨床期ADと症候前認知症期ADでの疾患進行の代替マーカーであることを明らかにしたもので、新たな疾患修飾療法の開発に影響を及ぼすと考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度