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糖尿病:ヒト多能性幹細胞に由来する膵島は非ヒト霊長類で糖尿病を軽減する
Nature Medicine 28, 2 doi: 10.1038/s41591-021-01645-7
ヒト多能性幹細胞由来の膵島(hPSC膵島)は、糖尿病治療のための有望な細胞供給源である。しかし、この治療戦略は、非ヒト霊長類のような生理学的にヒトと類似した大型動物モデルでの体系的な評価が行われていない。本研究では、化学的に誘導されたヒト多能性幹細胞から膵島を作製し(hCiPSC膵島)、これを糖尿病の非ヒト霊長類の門脈内に1回注入することで、内因性インスリン分泌が効果的に回復し、血糖コントロールが改善したことを示す。空腹時および平均食前血糖値は全てのレシピエントで大幅に低下し、食餌またはブドウ糖応答性のC-ペプチド分泌の遊離と全体的な体重増加が認められた。長期間追跡観察された4頭のマカクザルでは、ヘモグロビンA1cの平均値がピーク時の値と比較して2%以上減少し、外因性インスリンの平均必要量が移植15週間後に49%減少した。まとめると、我々の知見は前臨床の条件下では糖尿病治療にhPSC膵島が実際に使用できる可能性を示しており、これはhPSC膵島の臨床応用に向けた実質的な第一歩といえる。