インフルエンザウイルス:フェリチンナノ粒子H2インフルエンザワクチンの健康な成人での安全性と免疫原性:第1相試験
Nature Medicine 28, 2 doi: 10.1038/s41591-021-01660-8
現在、承認されている季節性インフルエンザワクチンは有効性がさまざまであり、インフルエンザのサブタイプ間で保存されているウイルスタンパク質ドメインに対して、もっと幅広い応答を誘導できる新しいワクチンプラットフォームが必要とされている。我々は、新規なフェリチン(H2HA-フェリチン)ナノ粒子インフルエンザワクチンのプラットフォームを評価するために、FIH(first-in-human)無作為化非盲検第1相臨床試験(NCT03186781)を行った。H2サブタイプはヒトでは1968年以来流行していないので、1968年以降に生まれた成人は、グループ1インフルエンザウイルスのH1サブタイプのみに曝露されているが、H1とH2には共通の保存されたHA幹部がある。この臨床試験にはH2未曝露の成人とH2に曝露されたことがある成人の両方を含めることで、免疫優性なHA頭部ドメインに対する既存の応答が存在する場合と存在しない場合について、保存されたHA幹部ドメインに対する記憶応答を評価することが可能になった。18~70歳の健康な参加者50人を対象に、H2HA-フェリチンの筋肉内投与を、投与量20 μgの単回投与(n = 5)、投与量60 μgの同種ワクチン2回投与によるプライム-ブーストレジメン(n = 25)、またはマッチした型のH2 DNAワクチンによるプライム後にH2HA-フェリチン60 μgでの2回目投与を行う異種ワクチンによるプライム-ブーストレジメン(n = 20)を行った。この試験の主要目的は、H2HA-フェリチンの単独、もしくはプライム-ブーストレジメンでの安全性と耐容性の評価であった。副次的目的は、ワクチン接種後の抗体応答の評価であった。ワクチンは共に安全で耐容性が良好であり、依頼に基づく(非自発的な)症状で最も一般的なものは、H2HA-フェリチン(n = 15、22%)およびH2 DNA(n = 5、25%)の両方で、接種後の軽度な頭痛であった。探索的解析から、H2未曝露集団とH2曝露集団の両方で、H2HA-フェリチンワクチンによって中和抗体応答が誘導されることが明らかになった。また、HA幹部を標的とすることにより、H2未曝露集団では、グループ1インフルエンザウイルス(季節性H1サブタイプと鳥類H5サブタイプの両方を含む)に対する広域中和抗体応答が誘導された。このフェリチンナノ粒子ワクチン技術は、パンデミック(世界的大流行)への備えやユニバーサルインフルエンザワクチンの開発に使える可能性のある、新規で安全、かつ免疫原性のあるプラットフォームである。