Editorial
時代遅れの法の抜け穴により、欠陥のある臨床検査が市場に出回っている
Nature Medicine 28, 2 doi: 10.1038/s41591-022-01729-y
少量の血液から何百もの病気を検出できるとうたった血液検査会社セラノスの創設者Elizabeth Holmesは、2022年1月に詐欺罪で有罪判決を受けた。しかし、この事件で悪用された抜け穴は残されたままだ。1976年に米食品医薬品局(FDA)により体外診断検査(IVD)の規制が承認されたとき、検査室独自開発検査(LDT)については全ての規制要件が免除された。LDTは、IVDとは違って、通常は小規模に使用され、希少疾患の診断に用いられることが多いため、患者へのリスクは低いと考えられたのだ。セラノス事件は、LDTが小規模な「検査室」検査から収益性の高いバイオテクノロジー市場へと移行したことを示している。その複雑性は増大する一方で、込み入ったアルゴリズムやソフトウエアを必要とし、企業などによって売買されるようになっている。監視がないため、LDTの使用数や被害者数などを正確に知ることができない。LDTには医学的重要性があり、IVDよりも常に精度や信頼性が劣るわけではない。問題は、長い年月を経てLDTがリスクをもたらす可能性が出てきたことである。こうした変化に対応するために、市場で扱われている全ての検査に分析的・臨床的妥当性のベースラインを設定するなど、確かな証拠に基づく、誤解を招くことのない検査にするための新しい規制の枠組みを速やかに構築する必要がある。