がん治療:抗PD-1治療を受けた黒色腫患者での臨床応答の腸内微生物相シグネチャーと免疫関連有害事象
Nature Medicine 28, 3 doi: 10.1038/s41591-022-01698-2
腸マイクロバイオームが、抗PD-1(programmed cell death protein-1)療法に対する抗腫瘍応答に関連する腫瘍外因性因子であることは多数の証拠によって示されているが、臨床転帰と関連することがこれまでに報告されている微生物シグネチャーは一致していない。我々はこの問題を解決するために、公開済みの4つのデータセットと併せて、黒色腫の新しいコホートの評価を行った。生存時間解析からは、当初の微生物相組成が、治療開始後約1年の時点での臨床転帰と最もよく関連していることが明らかになった。メタ解析や他の複合データのバイオインフォマティクス解析では、良好な応答と関連する細菌は、アクチノバクテリア門とファーミキューテス門ラクノスピラ科/ルミノコッカス属に限られることが分かった。逆に、グラム陰性細菌は、宿主の炎症性遺伝子シグネチャー、血中の好中球/リンパ球比の上昇、転帰不良と関連していた。ラクノスピラ科の細菌種(Lachnospiraceae spp.)もしくは連鎖球菌科の細菌種(Streptococcaceae spp.)に富む2つの微生物シグネチャーは、それぞれ良好な臨床応答と不良な臨床応答に関連しており、免疫関連の有害作用も異なっていた。コホート間には不均一性が見られたが、バッチ補正したマイクロバイオームデータで訓練した最適化all-minus-one教師あり学習アルゴリズムは、全てのコホートで抗PD-1療法に対する転帰を矛盾なく予測した。一様でない地勢的分布を持つ腸内微生物群集(マイクロバイオタイプ)は、転帰の良好と不良に関連しており、コホート間の相違の一因となっている。我々の知見は、腸マイクロバイオームとがん免疫療法への応答の間の複雑な相互作用に新たな知見をもたらし、今後の研究の進行行程を示している。