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がん治療/CAR T細胞:TGFβ非感受性に強化されたPSMAを標的とするCAR T細胞の転移性去勢抵抗性前立腺がんでの使用 :第1相試験

Nature Medicine 28, 4 doi: 10.1038/s41591-022-01726-1

キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は有望な有効性を示してきており、特に血液悪性腫瘍でそれは著しい。固形腫瘍でのCAR T細胞に関わる難問の1つは、免疫抑制性腫瘍微小環境(TME)であり、TMEの特徴はトランスフォーミング増殖因子(TGF)-βなどの多様な阻害因子が高レベルに存在することである。我々は、去勢抵抗性前立腺がんに向けて優性ネガティブTGF-β受容体で強化したCAR T細胞のヒトでの第1相試験の結果を報告する(NCT03089203)。主要評価目的は安全性と実行可能性であり、副次的目的にはCAR T細胞の分布、生物活性、疾患応答性が含まれていた。事前指定された評価項目は全て達成された。18人の患者が登録され、13人の被験者で4種類の投与量にわたって治療が行われた。13人の患者のうち5人がグレード2以上のサイトカイン放出症候群(CRS)を発症し、その中の1人では顕著なクローン性CAR T細胞増殖が見られ、前立腺特異的抗原(PSA)が98%超減少し、併発した敗血症を伴うグレード4のCRS後に死亡した。炎症誘発性サイトカインの急激な増加は、管理可能でグレードの高いCRS事象と相関していた。さらに、3人の患者では30%以上のPSA減少が達成されたが、養子細胞移植後、TMEに局在する多数の阻害分子の増加を伴ったCAR T細胞不全が起こった。CAR T細胞の動態から、血中での増殖や腫瘍への移行が明らかになった。従って、TGF-β抵抗性のCAR T細胞の臨床応用は実行可能であり、一般的に安全である。将来の研究では、転帰を改善するために、TMEに対するもっと多岐にわたる優れた方法を用いるべきであろう。

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