血友病A:血友病Aのアデノ随伴ウイルス遺伝子治療後に起こった、導入遺伝子からのmRNAおよびタンパク質の産生の個人間でのばらつき
Nature Medicine 28, 4 doi: 10.1038/s41591-022-01751-0
valoctocogene roxaparvovec(AAV5-hFVIII-SQ)の単回静脈内注入による血液凝固第VIII因子遺伝子の導入は、重症の血友病A患者でその効果が現在まで5年間にわたって持続している。AAV5-hFVIII-SQ由来第VIII因子の持続的発現の基盤となる分子機構は、ヒトではまだ調べられていない。第1/2相臨床試験(NCT02576795)のサブスタディーでは、5人の参加者で遺伝子導入の2.6~4.1年後に肝生検試料が集められた。主要評価項目は、肝臓の組織病理学的性質への影響の検討、AAV5-hFVIII-SQゲノムが導入された肝細胞の遺伝子導入パターンと割合の決定、エピソーム型ベクターDNAの特徴付けと定量、導入遺伝子の発現量(hFVIII-SQ RNAおよびhFVIII-SQタンパク質)の測定であった。組織病理学的解析では、異形成、構造の変形、繊維症、慢性炎症は見られず、hFVIII-SQタンパク質を発現している肝細胞で小胞体ストレスは検出されなかった。肝細胞はベクターゲノム染色陽性で、ベクターゲノムの投与量が多くなるほど遺伝子導入される細胞の数が増える傾向が示された。分子解析から、逆方向末端反復配列が融合した完全長環状エピソームゲノムの存在が示され、これが長期にわたる発現に関連している。同じように成功した遺伝子導入であるにもかかわらず、導入遺伝子発現には個人間のばらつきが認められた。これはおそらく、ベクターの転写、hFVIII-SQタンパク質の翻訳と分泌が、宿主が仲介する導入後機構によって影響を受けるためであろう。まとめるとこれらの結果は、AAV5-hFVIII-SQ投与後にエピソーム型のベクター構造が持続することを示しており、また、個人間のばらつきを仲介する機構候補の解明の開始につながる。