COVID-19:若年成人でのSARS-CoV-2ヒトチャレンジ感染における安全性、耐容性とウイルス動態
Nature Medicine 28, 5 doi: 10.1038/s41591-022-01780-9
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、2019年の出現以来、数億の症例を引き起こし、なお世界的に広がり続けている。発症機序や防御関連因子、新たな介入法の有効性試験を管理された状態で行うことを可能にする新しいSARS-CoV-2ヒトチャレンジ感染モデルを確立する目的で、以前の感染やワクチン接種の証拠がない18〜29歳のボランティア36名に10 TCID50の野生型ウイルス(SARS-CoV-2/ヒト/GBR/484861/2020)を経鼻接種する、非盲検非無作為化試験(ClinicalTrials.gov識別コードNCT04865237、資金提供者、英国ワクチンタスクフォース)が行われた。接種後、参加者は24時間体制の緊密な医療監視下で、高いレベルの臨床治療をフルに受けることのできる高度封じ込め隔離ユニットに収容された。本研究の主要目的は、参加者の50%以上に十分に耐容性のある感染を誘導する接種量を明らかにすることで、また副次的目的は感染時のウイルスや症状の動態を評価することであった。事前に指定されたすべての主要および副次的目的は達成された。2名の参加者は、スクリーニングと接種の間でのセロコンバージョンのため(事後に判明した)、プロトコール逸脱者を除くper-protocol解析から除外された。18名(約53%)の参加者が感染し、ウイルス量(VL)は急速に上昇して接種後約5日目でピークとなった。ウイルスは最初、喉で検出されたが、次いで鼻腔で大幅に高いレベルとなり、1ミリリットル当たりのコピー数が8.87 log10に達した〔中央値、95%信頼区間(8.41, 9.53)〕。鼻腔からは、平均して接種後10日目まで生きたウイルスを回収できた。重篤な有害事象はなかった。感染した参加者の16名(89%)で軽症から中等症の症状が接種後2〜4日目から始まることが報告されたが、2名(11%)の参加者は無症状のままであった(報告できる症状はなかった)。嗅覚異常が、15名(83%)の参加者で徐々に起こった。VLと症状の間に量的な相関関係はなく、無症候性感染でもVLは高値であった。感染した参加者は全員、血清中にスパイクタンパク質特異的IgGおよび中和抗体を生じた。ラテラルフローテストの結果は生きたウイルスと強く相関しており、また週2回の迅速抗原テストは生きたウイルスの70〜80%が生じる前に感染を診断できることが、モデル化によって示された。このように、若年成人でのこの最初のSARS-CoV-2ヒトチャレンジ感染実験の詳細な特徴解析や安全性検討によって、SARS-CoV-2初回感染の経過中のウイルス動態が確認され、これはSARS-CoV-2の伝播に影響を及ぼす公衆衛生上の勧告や戦略に関わってくる。今後の研究によって、感染や症状が見られなかった参加者で防御に関連する免疫因子が見つかり、また、感染前の免疫やウイルスの変化が臨床転帰に及ぼす影響も明らかになるだろう。