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がん免疫学:変異を起こしたPIK3CAに由来するパブリックネオアンチゲンの免疫原性と治療での標的化

Nature Medicine 28, 5 doi: 10.1038/s41591-022-01786-3

パブリックネオアンチゲン(NeoAg)は、反復的に変異が生じるドライバー遺伝子に由来する共通のがん特異的エピトープのエリートクラスの1つである。今回我々は、最も高頻度にゲノム変異の見られるドライバーがん遺伝子である変異型PIK3CAが免疫原性のパブリックNeoAgを生じるのかどうかを確認するための、単一細胞トランスクリプトームとT細胞受容体(TCR)塩基配列解読を組み合わせたハイスループットプラットフォームについて報告する。この戦略を使って、内因的にプロセシングされたネオペプチドを認識する一連のTCRを開発した。これは、ありふれたPIK3CAホットスポット変異〔広く見られるヒト白血球抗原(HLA)-A*03:01対立遺伝子により制限されている〕を網羅している。機構的には、このパブリックNeoAgの免疫原性は、HLAアンカーに望ましい置換が起きてネオペプチド/HLA複合体の安定性が増強されることにより生じる。構造研究から、HLAに結合したネオペプチドは、ペプチドの骨格が主である比較的特徴に乏しい表面を持つことが示された。このエピトープに高い特異性と親和性で結合させるために、異常に長いCDR3βループによって拡張された境界面を介してネオペプチドと結合するTCRのリード臨床候補を見つけだした。さまざまな悪性腫瘍の患者では、NeoAgのクローン的な保存性とネオペプチドに対する自然発生的な免疫原性が観察された。また、TCRを改変したT細胞の養子移入は、変異型PIK3CA腫瘍を有するマウスでin vivoの腫瘍退縮を引き起こしたが、野生型PIK3CA腫瘍マウスではこのような効果は見られなかった。まとめるとこれらの知見は、変異型PIK3CA由来のパブリックNeoAgの免疫原性と治療に使用できる可能性を明らかにしている。

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