Editorial
データの共有と保護の間の危うい綱渡り
Nature Medicine 28, 5 doi: 10.1038/s41591-022-01852-w
ゲノム解析は、過去20年の間に生物医学研究や医療で中心的な役割を果たすようになった。こうした解析にはゲノムデータの共有が不可欠であり、最近の成功例としては新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック(世界的大流行)の初期段階での迅速なデータ共有が、ワクチンや治療薬の開発を記録的な速さで可能にしたことが挙げられる。しかし、データへのアクセスとプライバシーの保護という2つの間でバランスをうまく取っていくことは非常に難しい。データを真に匿名化することは困難であり、遺伝学データのプライバシーの問題は、今後ますます複雑になっていくと思われる。今こそ、ゲノム研究におけるデータセキュリティーとプライバシーの問題への対処法を真剣に考え始めるべき時である。万能な解決策はないかもしれないが、情報学、倫理学、法律などさまざまな分野の専門家が十分に意見を交わし、患者や一般市民も議論に加わることがカギとなるだろう。