COVID-19:COVID-19と10か国の医療システムのレジリエンス
Nature Medicine 28, 6 doi: 10.1038/s41591-022-01750-1
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の間に医療サービスの利用が減少したことは、集団の健康に重大な影響を及ぼす可能性がある。本研究では、中断時系列デザインを用いて、2つの低所得国(エチオピア、ハイチ)、6つの中所得国(ガーナ、ラオス人民民主共和国、メキシコ、ネパール、南アフリカ共和国、タイ)、2つの高所得国(チリ、韓国)で、今回のパンデミックが31の医療サービスに及ぼした直接的な影響を評価した。医療サービスを維持しようとする努力にもかかわらず、どの国でもさまざまな規模や期間の混乱が見られ、こうした混乱には国の所得層やパンデミックの強度による明確なパターンは見られなかった。医療サービスの混乱は、しばしばCOVID-19流行の波に先行して起こっていた。がん検診、結核の検診や検出、HIV検査が最も影響を受けた(26〜96%減少)。外来患者の総通院日数は国レベルで9〜40%減少し、2020年の年末までは予測より低い状態が続いた。母体医療サービスはこれらの国々の約半分で中断され、5~33%の範囲で減少した。小児の予防接種の中断期間は短期間だったが、キャッチアップキャンペーンが予防接種を逃した小児のすべてに行き渡らなかったのではないかと我々は推測している。対照的に、HIVのための抗レトロウイルス薬の提供は影響を受けなかった。2020年の年末まで、これらの国々の半数ではかなりの混乱がそのままになっている。2021年のまだ未完成の予備データは、混乱が続いている可能性が高いことを示している。観察されたサービス利用低下の一部は、ロックダウン中のヘルスケア必要性の減少(感染症や外傷の減少)に起因する可能性があるが、医療システムのレジリエンス不足を反映している部分がそれよりずっと大きいと考えられる。各国は、現在のパンデミックの間に実施できなかったヘルスケアを補整するプランを作成し、将来の緊急事態に備えて医療システムのレジリエンスをより良いものにするための戦略に投資しなくてはいけない。