COVID-19:SARS-CoV-2の従来株、デルタ株、あるいはオミクロン株に感染したワクチン未接種者と既接種者の感染性ウイルス負荷
Nature Medicine 28, 7 doi: 10.1038/s41591-022-01816-0
感染者の体内から液滴やエアゾルとして排出される感染性ウイルスの量(VL)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の伝播を部分的に決定している。qRT-PCRによって測定されたRNAコピー数であるVLは感染性のあまりよくない代理指標にすぎない。感染性VLの動態についての研究は、SARS-CoV-2変異株の多様な伝播性の背後にある機構や、ワクチン接種が伝播に及ぼす影響を解明するために重要であり、公衆衛生対策の指針となりえる。本研究では、「懸念される変異株」になる前の(pre-VOC)SARS-CoV-2、デルタ株、もしくはオミクロンBA.1株に感染したワクチン非接種者、あるいは既接種者で、症状が見られた最初の5日間の感染性VLをin vitroでの培養能アッセイによって定量した。pre-VOC SARS-CoV-2に感染したワクチン非接種者は、デルタ株に感染したワクチン非接種者と比べると感染性VLが少なかった。ワクチン接種完了者(初回のワクチン接種シリーズ中の2回目の接種を受けてから2週間以上経過と定義する)は、デルタ株ブレークスルー感染症例での感染性VLが、ワクチン非接種者に比べると大幅に減少していた。オミクロンBA.1株のブレークスルー感染の症例では、ワクチン非接種者と比較した場合の感染性VLの減少は、ブースター接種した場合にのみ観察され、ワクチン接種を完了しただけでは観察されなかった。さらに一連のワクチン接種を完了したオミクロン株BA.1感染者では、ワクチン接種を完了したデルタ株感染者に比べてVLが低下しており、このことは感染性VLの増加以外の機構がSARS-CoV-2オミクロンBA.1株の高い感染性に関わっていることを示唆している。我々の結果は、ワクチンは伝播リスクを低下させる可能性があり、従って重症疾患から個人を守ることを超えて、公衆衛生上のメリットがあることを示している。