COVID-19:ブレークスルーSARS-CoV-2感染後のlong COVID
Nature Medicine 28, 7 doi: 10.1038/s41591-022-01840-0
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の急性期後後遺症(long COVIDとも呼ばれる)が報告されているが、ワクチン接種者でのブレークスルーSARS-CoV-2感染(BTI)が急性期罹患後症候群を起こすかどうかについて明らかではない。本研究では、米国退役軍人省の国家医療記録データベースを用いて、BTIに罹患した3万3940人からなるコホートに対して、SARS-CoV-2感染の証拠のない人々からなる同時期非罹患者コホート(n = 498万3491)、流行前非罹患者からなるコホート(n = 578万5273)、ワクチン接種者からなるコホート(n = 256万6369)という対照コホートを設定した。感染後6か月目の時点では、罹患後最初の30日以降、BTI罹患者の死亡リスクは、同時期非罹患者の対照群と比較するとより高く〔ハザード比(HR)= 1.75、95%信頼区間(CI):1.59, 1.93〕、急性期後後遺症(心血管系、凝固系、血液学的、消化器系、腎臓、精神、代謝系、筋骨格系、神経学的疾患を含む)の発症リスクも高かった(HR = 1.50、95% CI:1.46, 1.54)。この結果は、流行前非罹患者、あるいはワクチン接種者からなる対照群との比較とも一致していた。以前にワクチン接種をしていないSARS-CoV-2感染者(n = 11万3474)との比較では、BTI罹患者は死亡リスクが低く(HR = 0.66、95% CI:0.58, 0.74)、急性期後後遺症の発症リスク(HR = 0.85、95% CI:0.82, 0.89)も低かった。これらの知見をまとめると、感染前のワクチン接種は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期後後遺症の段階では部分的な防御効果しかもたらさないことを示唆しており、従ってワクチン接種を唯一の緩和策としてこれに依存することは、SARS-CoV-2感染の健康への長期的な影響を減らす最適な方法にはならない可能性がある。これらの知見は、BTIの一次予防に関する戦略を今後も続けて最適化していくことの必要性を強く示唆しており、BTI罹患者のための急性期後ケアの道筋を開発する指針となるだろう。