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クローン性造血:クローン性造血の長期的動態から明らかになった遺伝子特異的な適応度効果
Nature Medicine 28, 7 doi: 10.1038/s41591-022-01883-3
クローン性造血(clonal hematopoiesis of indeterminate potential;CHIP)は、60歳を超えると有病率が急速に上昇し、悪性腫瘍、心疾患や虚血性脳卒中のリスク上昇と関連付けられている。CHIPは、造血幹・前駆細胞(HSPC)での体細胞変異によって引き起こされる。HSPCでの変異は白血病を引き起こすことが多いため、我々はHSPCの適応度がCHIPから白血病への形質転換に大きく影響しているのではないかと考えた。HSPCの適応度は、中立変異を持たない、あるいは中立変異のみを持つ細胞に対する増殖優位性と定義される。さまざまな遺伝子での変異が適応度にとって別々の利点となるなら、これによって患者を層別化できる可能性がある。我々は、長期的な塩基配列解読を用いて、高齢者で12年以上にわたり変異の適応度効果を定量化し、また、個々の変異の状況を同時に生じている変異とともに考慮して、個人でのバリアントの増殖能を定量化するフィルタリング方法を開発した。遺伝子特異的な適応度の差異は、個人間の変動を上回る可能性があり、従って個別化された臨床的管理の基盤となる可能性があることが分かった。