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がん治療:転移性大腸がんで循環血中腫瘍DNAをパニツムマブ再投薬の指標とする ─ 第2相CHRONOS試験

Nature Medicine 28, 8 doi: 10.1038/s41591-022-01886-0

上皮増殖因子受容体(EGFR)に対するモノクローナル抗体は、RAS野生型(WT)の転移性大腸がん(mCRC)治療での使用が承認されているが、抵抗性変異が生じるためにその有効性は限定的である。我々は以前に、EGFR遮断時の循環血中腫瘍DNA(ctDNA)中に見られるRASBRAFEGFRの変異対立遺伝子が治療中断によって減少することを示した。そこで我々は、血中の抵抗性変異をモニタリングすれば、その後の抗EGFR抗体薬治療の合理的な指標となるのではないかと考えた。本研究では、非盲検単群第2相臨床試験であるCHRONOSの結果を報告する(ClinicalTrials.gov:NCT03227926、EudraCT 2016-002597-12)。この試験では、RAS/BRAF/EGFR変異レベルを血液ベースで調べることにより、化学療法休薬期間中のパニツムマブによる抗EGFR療法の再開を調整する。主要評価項目は客観的奏効率とした。副次評価項目は、無増悪生存期間、全生存期間、この治療戦略の安全性および耐容性とした。CHRONOSでは、以前の抗EGFR抗体薬ベースのレジメンでの治療後に腫瘍組織がRASWTの患者で、ctDNAベースの介入的スクリーニングを行った。52人の患者のうち16人(31%)で、抗EGFR療法に対する抵抗性を生じる変異が少なくとも1つ見つかり、試験から除外された。この試験の主要評価項目は満たされ、登録された27人の患者のうち8人(30%)は部分奏効を達成し、17人(63%)では2例の不確定奏効を含め疾病管理が達成された。これらの臨床結果は標準的な三次治療よりも優れており、介入的リキッドバイオプシーはmCRC患者で抗EGFR抗体薬パニツムマブの再投与の指標として、適時に効果的かつ安全に使用できることを示している。こういう状態の患者でパニツムマブ再投与と標準治療法を正式に比較するためには、大規模な無作為化試験が必要である。

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